水と環境保全対策の専門誌「用水と廃水」の2025年2月号に「わが国における水道事業の官民連携の現状と課題および今後の展望」という私の論文が掲載されました。
最後の「まとめ」の部分を全文引用します。
最近の水道事業の官民連携については,政府はPFI法の改正などにより,さまざまな方策を打ち出しているが,実際はコンセッションを進めているのは宮城県の一件にすぎず,自治体になかなか広がらないのが現状である。みやぎ式も参考にしてほしいと考える。
近年,水道事業の官民連携について,海外の再公営化の事例等から,日本も民営化を押しとどめようとする声がある。しかし,海外(フランス等)の「再公営化」は,日本の「再公営化」とは少し違ったところがあり,「コンセッション」の内容も海外(フランス等)と日本とでは,その定義に違いがみられる。
日本においても,コンセッション方式の導入=民営化ではない。フランスだけでなく日本でも,水道事業は公共が最終責任を負っていて,コンセッション方式は,その大きな枠組みの中で,民間のノウハウ・技術・資金などを効果的・効率的に活用しようとする官民連携手法の一つである。
また,すでに日本の事例にあるように,水道広域化とともに官民連携を進めると,より円滑に水道事業の抱える諸問題を解決の方向で進めることができると考える。
自治体,市民,そして水道サービスに携わる現場の技術者や労働者が三位一体で議論を進められていると思われるが,今後さらに歩み寄り,議論していく必要があると考える。また,自治体は市民にもっと官民連携を理解してもらえるように説明会を増やすべきである。水道事業に関する諸問題は,もはや「待ったなし」の危機的状況にある。令和6年能登半島地震では水道施設にも大きな被害が出たが,今後万一,東南海の大規模地震や首都直下地震が発生しても,人の命をつなぐ水だけは最低限確保する必要がある。意見の食い違いはさらに話し合いをすすめて早く解消しないといけないと考える。民営化か再公営化かを議論するのも必要だが,根本的な問題にさらに真摯に向き合うべきであろう。
諸外国の水道事業の官民連携の状況については,改めて別稿にて論考することにする。
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